夕焼け結び

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鼻が冷えないぐらいの気温。
その季節に見る夕焼けは、ほんのりとしたグラデーションを空いっぱいに広げる。
太陽をしまい込み、薄紅さした地平線から絵の具を並べて一筆でなぞったかのような色。
幾分もしないうちに星々が点々としてくるだろう。
強めの風を受けながら、2人は肩を並べ眺めていた。

『私ね、このグラデーションの着物が欲しい』

百合子はいつも突拍子もないことを言う。
きっと訪問着みたいなのが欲しいのだろう。
彼女は今年31歳。ひとつぐらいキチンとしたものがあってもいいかもしれない。

『それもいいね。でも、もっと素敵な着物着れるんだけど』
『え!何それ。知りたい!』

『色打掛』

夕陽はとっくに消えたというのに、彼女の顔は照らされたような赤になっていた。
デニムに星々のような水滴が染みていく。
僕らはその日、夕焼け空に縁結びしてもらった。
恋愛
公開:20/10/13 00:41
更新:20/10/26 17:27
ゆかり コンテスト

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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