盲目の男

ある日を境に、私は3メートルより先の景色を見ることが出来なくなってしまいました。
きっかけは交通事故だったのですが、めったにない症例だとお医者さんが話していました。

当然、今まで通りの生活はできなくなりました。
車は運転出来なくなり、移動は専らが歩きになりました。
幸い、仕事は家でも出来るものだったのでこの機会に在宅勤務に移り変えました。
すると、自然と家族と過ごす時間が増えていきました。

食事中はいつもテレビを見ていたのですが、もうテーブルからテレビを見ることが出来なくなりました。
なので、代わりに家族の顔を見ながら食事をするようになりました。
この料理美味しいね、とか今日何があった、とか言って普段しないような話をするようになりました。
テレビの代わりにはなったと思います。

もう今までの生活には戻れません。
全く、不自由な暮らしになったものです。