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やばい、遅刻する!
そのとき、角から女子高生が飛び出してきた。
危ない! どしーん。
目の前で尻餅をつく彼女は、片手におむすびを持っていた。
「こういうのって、食パンじゃないの?」
大丈夫かと声をかける前に、こんなことを口走っていた。
「ごはん派なので。あなたは?」
「おれも、ごはん派だけど……」
もう遅刻は免れそうにない。
諦めたおれたちは、好きなおむすびの具の話をしながら歩いて学校へ向かった。
案の定、彼女は転校生で、席は隣だった。

そんな漫画みたいな縁があった彼女は、今やおれの妻だ。高校生の娘もいる。
「やばい、遅刻する!」
「これ持って行きなさい!」
妻は、ラップに包んだおむすびを娘に渡した。
「いってきます!」
いってらっしゃいの代わりに、おれは決まってこう言うんだ。
「角を出るときは慎重にな!」
事故に遭ったら大変だし、なにより、愛娘に彼氏ができるような縁はいらないからね。
青春
公開:20/10/11 11:57
更新:20/12/30 09:52

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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