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公園で昼食を食べ、ベンチで横になっていると何やら熱っぽくなってきたので、近くの薬局で風邪薬を買った。最近よく効くと話題のカプセル剤だ。ボトルの水で一粒飲み、会社に戻ろうと道を進んだが、どんどん体が熱くなっていった。
薬を飲んだのにな…と思っていたら、それは周囲の気温のせいだとわかった。
北方向にある会社に行く筈が南へ進み続けていたのだ。だが何故か引き返す気が全く起きない…それも熱発で頭が働かないせいなのか…。

やがて日が落ちても、朦朧とした意識のまま南へ進み続ける俺のもとに、波音と潮の香が届いてきた。
靴裏の感触が変わる場所まで来ると、俺はポケットからカプセルを取り出し、月明りで中を検めた。そこには、いま自分が踏みしめているのと同じ"星の砂”が入っていた。

陸風に吹かれ、体温が下がっていくのを感じる。同時に頭の中も冷やされていくようだ。
掌に乗せた星の砂が舞い散り、海へと帰っていった。
ファンタジー
公開:20/10/12 12:25
更新:20/10/13 10:55

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