百年の恋

美術館で彼女を見た瞬間釘付けになった。
古典的な美人。完璧なバランスだ。
目が合うと和かに微笑んだ。僕は軽く会釈をした。
「僕は藤崎当麻」
『ドニーズ・ナジャ大島よ』

展示はモダニズム時代のファッション写真の特集だった。
僕は1921年の著名なファッション誌のモデルを指して言った「貴女に似ている」
彼女は嬉しそうに『私の高祖母よ』と言った。
「血が繋がってると思ったよ。あまりに似ているから」
『貴方は彼女が好きだった男性の子孫なのよ』
驚いた。
「なぜわかるの？」
『彼女が隠していた写真の男性が貴方にそっくりなの。苗字も同じ』

僕らはデートを重ねた。同じものを見て、同じように感じ、同じように感動した。
「百年の恋だね」『そうね』彼女は笑った。
「僕たちで祖先の夢を叶えよう」
彼女は無言。
「結婚しよう」
『運命には逆らえないわね』
僕らは唇を重ねた。百年の恋は僕らが成就したのだった。