無縁墓地に眠る方々

　オカルト雑誌の誌面で"無縁仏の霊との会話"が企画された。当然、台本ありきの内容であり、依頼した霊能力者も雑誌の関係者であった。

　まず、記者と霊能力者は無縁墓地を訪れ、写真を撮り、手を合わせ、写真を撮り、祈り、写真を撮り、対話"風"のポーズを決め、写真を撮り、涙を流す"演技"をし、写真を撮り、並ぶ無縁墓を清掃する"フリ"をし、写真を撮り、写真を撮り、写真を撮り続けた…。

　記者と霊能力者にとって、それはごくごく普通の企画であり、購買層のオカルトファンを満足させるためだけの三文記事――その場にいる誰もがそう考えていた。

　だが、今回の企画は、過去の似たような企画とは違い、異なる点がひとつだけあった。その無縁墓地に眠る霊たちは"本物"であったということだ。事実、この企画の参加者全員が行方不明となり、記事は潰れた。


　記者が残した多くの写真には――無数の無縁墓が累々と並んでいる……。