禁断の果実になれなくて

4
3

愛を齧る。
別れを告げられたのは田んぼの隣。
更にその隣のビニールハウスに忍び込んで、赤い実にかぶりついた。
人目を盗む恋の終わりに、小さい盗みをしたのだ。
青臭くて、甘くて、すっぱくて。
初めての盗みもあってか、泣けた。

-知らなければこうやって齧ることもなく、泣いていただけだっただろう。

夏の最後の風が通り抜ける。
スカートも髪も激しく舞っていた。
青臭い果実の旬が終わる。
そのまま全部消えていくような空気。

-あなたがくれたもの1つ取って置いていいだろうか。

『トマトってさ。
愛のリンゴって言うらしいよ』

愛を齧って、全部この身に。
私の青春、全部置いていって欲しかった。

もう1つ盗もうと思ったけど、やっぱりやめた。
恋愛
公開:20/10/12 00:13

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

Twitter: https://twitter.com/rainy02forest
note: https://note.com/tettio02
Radiotalk: https://radiotalk.jp/program/61359

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容