『満ちる』 生幸虧盈

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祝言で父が祝いの酒をついでくれた。
新郎側の挨拶で、息子は昔から調子に乗りやすい子だった、と皆を笑わせていた。
父は言う。
「お前の幸せが末永く満ちるように」

子供が二人できて妻との仲も良い。仕事は面倒な客や不合理な命令もあるが、仲間との酒がそれを薄めてくれる。

だが憂さ晴らしの酒は徐々に増えた。
子供の問題を妻に任せきりにして家族は不和になった。
俺は結婚祝いのグラスを手に父の言葉を思い出した。
このままではダメだ。
俺は酒をやめ、つきあいを減らし、家族の時間を作って話しをした。
すぐには回復しなかった。それでも皆の幸せを願った。

時が経ち、長男が祝言を挙げた。
そこにはお銚子から注がれる酒以上に大切なものがあった。
それは満ちる事があれば欠ける事もある。だから努力が要る。
今日は祝いの席。そこで俺は父と同じ言葉を息子へ贈ることにする。
彼にも、幸せが末永く満ちるように、と。
その他
公開:20/10/11 19:52

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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