分からない

社員Ａは大変優秀で平均的な社員の約1.5倍の働きをする。
同期入社の社員Ｂは真面目だが仕事は遅く優秀とは言えなかった。
人事評価はＡの方が当然高く、Ｂは引き合いに出される事が多かったが元より出世欲が無かった為、二人の仲は良好だ。
やがてそれぞれに部下がついた。
するとＡについた部下は3ヶ月ももたず退職した。
その後も部下はつくが長くは続かなかった。
いっぽうＢについた部下は順調に仕事を覚え即戦力へとなり多くの部下を育てあげた。
いつしか人事評価はＢの方が上回っていた。

「分からない。どうしてお前の部下が優秀に育つんだ。」
ＡはたまらずＢに相談した。
「確かに君は僕より遥かに仕事ができる。知識も豊富で正直何でも知ってるんじゃないかと思うくらいだ。」
「でも唯一、僕が分かっていて君が分かっていない事がある。」
Ａは身を乗り出した。
「何だそれは。」

「君は『分からない』を分かってない。」