判定は?

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満員電車の中で肘や肩からかけている眼鏡を死守していた。水牛の群れに押されるように電車を降りる。ほっとしかけた時、階段をかけ上がってきた男性の肩が眼鏡のつるにぶつかった。ごめんと言い、男性は電車の中に滑り込んだ。
「あーあ」
眼鏡の丁番が歪んでしまい、かけると視界までも歪んで見えた。

「えっ、先輩一日外回りなの」
何かと頼りにしている先輩だったが、眼鏡を買いに行く時、似合うか似合わないかの判定をして貰っていた。
「眼鏡をかけて、眼鏡をかけた所がみたい」
裸眼では試しがけした自分の顔がぼんやりしていて似合ってるかどうか分からず、にやにやするだけだった。
「お似合いですよ」
男性店員の判断を信じて良いのだろうか。
「あの、全く見えなくて」
「そうですね、こちらは如何ですか?」
シンプルだけど、好みの形だった。
度が入った眼鏡をかけ、くっきり見えた店員を見てこれは運命の出会いだと思った。
青春
公開:20/10/11 09:32
眼鏡 満員電車の悲劇

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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