スカイアクアカルチャー

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山並みの中に雲海が現れたーー。ここは、雲海で魚の形をした雲を育てているスカイアクアカルチャーの養殖場だ。
スカイアクアカルチャーは、気候大学校発のベンチャー企業で、雲海のときだけ活きのいい魚の形をした雲を人工的に繁殖させ、飼育している。
今の旬はイワシ雲とサバ雲だ。どちらも海中と同様に雲海を回遊しており、脂ならぬ水気がのっていて大変勢いがある。
スカイアクアカルチャーの飼育員は、こまめにエサである雨粒や雪氷を与えながら、余分な塵や埃が混じらないよう細心の注意を払う。そうすると見た目も綺麗なイワシ雲とサバ雲ができあがるという。
成長したイワシ雲とサバ雲は、空輸便で気候省の外郭団体が運営する「空と雲の水族館」に運ばれて展示される。
秋の夕暮れ時に水族館では季節限定のショーが行われる。イベント会場に設けられた雲海の水槽にイワシ雲とサバ雲を放つと、黄金色に輝き、神々しいまでに美しい姿に変化した。
SF
公開:20/10/11 07:38
山並み 雲海 養殖場 繁殖 飼育 イワシ雲 サバ雲 回遊

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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