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「なあ、何色だった?」

 夕日に染まる屋上で、少年が言った。
相手からの返答は無かったが、関係ないとばかりに、少年は話を進める。

「赤か?黒か?それとも意外に青?俺的にはさ、やっぱ白がいいと思うんだよ!汚れがないって感じだし、夢もあるだろ。」

「つーか、お前だけズルいよな。二人一緒にって決めてたのに。」

「まあ、俺もすぐそっち側の男になってやるからな!」

 突然少年が立ち上がり、脱ぎ捨てた上履きを、赤い箱の近くに投げ捨てる。すぅ、と息を吸い込み、

「見てろよーーっ!!!」

と、空に叫んだ。
晴れやかな顔で、淀み無い声で。

右頬に大きなガーゼを貼り付けて。

鉄製の柵に手を掛ける。

 それを乗り越えた次の瞬間、少年の足が地に着くことは二度となかった。
 
その他
公開:20/10/11 01:28

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