石化症

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 生まれつきN子の体は午前9時~12時の間、石のように固まってしまう。この先天性石化症候群のために、彼女は職に着くことができなかった。
「また、面接落ちちゃった……」
 携帯電話に貯まった大量のお祈りメールを、無表情で整理する。30件削除したところで視界が潤んだ。
 N子はとうとう耐えきれなくなり、親友に電話をかけた。
「石化症のせいで就職先が決まらないの。自営業をはじめるノウハウもないし、もう夜勤か水商売位しか思い付かないよ……」
「本当に!? じゃあさ、アタシの職場に来てよ」
「でも私……」
「いいから。N子じゃなきゃできない仕事なの」
 親友のコネのお陰か、あっさり入社試験に合格。
「たくさんの人に見られるのはちょっと恥ずかしいけど、まあいっか!」
 午前9時前、N子はきらびやかな洋服に着替え、ショーウィンドウの前に立つ。石化した彼女は、どんなマネキンよりも魅力的だった。
SF
公開:20/10/10 23:22
更新:20/10/11 07:42

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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