ファンレター
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作家、佐水昌介宛に手紙が届いた。本名も住所も公開していないのに自宅のポストに入っていた。封筒に貼られた薔薇のシールが指先から垂れて落ちた血のようで気味が悪い。封を開けると手紙と薔薇の押し花が同封されていた。
『貴方に消されたファンより』
何の悪戯だと捨てようとした時、数年前に同窓会で使ったホテルのロビーで声をかけてきた女が頭をよぎる。
携帯電話が鳴り出版社からだと分かりほっとする。
「え? 取材先変更、ああ、分かった」
担当編集者の倉木がホテルのロビーで待っていた。
「会議室でお待ちです」
「同窓会で来たホテルだな」
誰もいない会議室の薔薇を見て目眩がした。
「私をモデルにした女性の場面、何故削除したんですか? あんなに協力したのに」
薔薇のある部屋にいる自分達を隠し撮りした写真を床にばらまく。
「忘れるなんて酷いわ」
細い首に手を伸ばす。呻き声はむせ香る薔薇に消されればいい。
『貴方に消されたファンより』
何の悪戯だと捨てようとした時、数年前に同窓会で使ったホテルのロビーで声をかけてきた女が頭をよぎる。
携帯電話が鳴り出版社からだと分かりほっとする。
「え? 取材先変更、ああ、分かった」
担当編集者の倉木がホテルのロビーで待っていた。
「会議室でお待ちです」
「同窓会で来たホテルだな」
誰もいない会議室の薔薇を見て目眩がした。
「私をモデルにした女性の場面、何故削除したんですか? あんなに協力したのに」
薔薇のある部屋にいる自分達を隠し撮りした写真を床にばらまく。
「忘れるなんて酷いわ」
細い首に手を伸ばす。呻き声はむせ香る薔薇に消されればいい。
ミステリー・推理
公開:20/10/09 20:57
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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