優しさのハンカチ

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 男が道を歩いていると、前を歩く女性のかばんから、ひらりと何かが落ちた。花柄のハンカチだ。
「すみません、これ落としましたよ」
 男は小走りで追いかけた。女性は少し驚いたように振り向いたが、男がハンカチを持っていることを知って笑顔で頭を下げた。
 その後女性が歩いていると、道の端で女子高生が下を向いて立っていた。どうやら泣いているようだ。
「どうしたの? よかったらこれ使って」
 女性は思わずかけよった。先ほどのハンカチを手渡す。女子高生は下を向いたまま、そっとハンカチを受け取った。
 次の日、女子高生は少し晴れやかな表情で学校へ向かっていた。前日は落ち込んでいたが、見知らぬ女性のおかげで心が洗われたようであった。前を歩いていた男が自転車とぶつかり、尻もちをついた。その拍子に手を怪我したようだ。女子高生は近づいて花柄のハンカチを差し出す。
「どうもありがとう。あれ、このハンカチは……」
 
その他
公開:20/10/10 13:37

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