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我が家には、祖父の代から引き継がれている家宝がある。どのように手に入れたかは不明だが、見た目は鉛筆にそっくりで「縁筆」という代物だ。
縁筆を使って紙に書けば、筆によって縁が結ばれ、願い事が叶うから縁筆と呼ばれている。
例えば、初恋の相手へのラブレター、第一志望の学校の入学試験答案用紙、第一希望の就職先に提出する履歴書などを縁筆で書けば必ず成就する。
縁筆の芯に使われている黒縁が紙との摩擦によって細かい粒子になり、紙に顔料の軌跡を残して筆記されるが、その際に生じる筆力ならぬ縁力が願い事を叶えるという。まさに奇跡の縁筆だ。
ただ、縁筆で書いた文字が汚かったり誤りがあったり、書いている途中で縁筆の芯が折れてしまったりした場合は願い事が叶わないので、丁寧かつ慎重に書く必要がある。
この縁筆、今は私が大事に保管しているが、ちょうど文字の読み書きを習い始めた我が子に、誕生日プレゼントとして贈る予定だ。
その他
公開:20/10/10 07:10
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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