ユカリちゃん人形

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真白な建物の真白な部屋の一室に白い髪の女性が住んでいた。
10年前に夫を亡くしてからずっと一人暮らしだ。
その女性の心の拠り所となっていたのが『人形』だった。
ケース入りのフランス人形から、子供用の人形まで、沢山の人形を持っているが、中でも一番のお気に入りは『ユカリちゃん』と名付けられた人形だ。
「ユカリちゃん、ご飯の時間よ。」
「ユカリちゃん、お顔を拭きましょうね。」
彼女は甲斐甲斐しく、その人形の世話をした。
そして、世話をするうちにユカリちゃん人形は話す様になっていた。
「今日は、いいお天気だね。」
「ねえ、体の具合は大丈夫?」
彼女は、その人形が可愛くて仕方ない様子だった。

「ゆかり、今日もお疲れ様。」
中年女性が、真白な病室をのぞき込む。
「ずっと、座ってるだけだもん。疲れてないよ。」
白髪の老婆が横たわるベッドの側で可愛らしい少女が微笑んでいた。
ファンタジー
公開:20/10/09 22:59
更新:20/10/09 23:05

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