啜る花

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ちょっとした噂のある女がいた。
どこから流れてきた女か深く知る者はいないので定かではなく、取り立てた容姿をしもしないが、その女に見初められた男は抗えない淫靡の香を嗅ぐという。
脱げば枯れた竜胆が一輪、横たわる蝙蝠に寄生した構図の刺青が女の腰から背中にかけて彫られている。
流されるがまま女を抱くと、腐りかけて色を失った花葉に精気が宿り、くっきりと濡れて色づく。欲望に任せ女を喘がせると締まった蕾が綻び、花弁は青紫に淡く明滅して先が捲れ始め、開くと思うところで男は果てを迎えるのだ。
正気に戻った頃には女の姿は跡形もなく、微かな花の残り香のみ。
喩えようのない快楽の後は泥のように消耗し、欲塊の化身だったあの昂りが幻だったかのように暫く男芯が使い物にならなくなる。
満開を望まなかったことに胸を撫で下ろす。咲き切っていたらと思うとぞっとする。
そう思いつつ一夜を探して彷徨わせる、そんな女の噂がある。
その他
公開:20/10/08 16:53

晴れ時々雨

普段Twitterにて140字小説を中心に書いています。ジャンルはないです。

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