第1号の被害者

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「ちょっとお邪魔したいんだけど」
インターホン越しに見知らぬ女の子のご立腹加減が伝わってきた。
研修でしばらく留守にしている間、録画が5件、この女の子で埋まっていたので何となく顔見知りになったような気がする。
「君どちら様?」
「いいから入れて」
誰だか思い出せない。しかし小学生女子の剣幕に圧され気味の僕はロックを解除してしまった。

聞くところによると、彼女は未来から来たらしい。散歩がてら過去に飛んだ彼女は5代以上前の若い祖母に辿り着いた。祖母は恋人と駆け落ちめいたことをしようと逃避行先を探していたが家賃の予算がかなりオーバーしていたので助けてやりたいというのだ。
それが僕の部屋なんだそうだ。
「だからさ、事故物件にでもなればコレがお安くなるじゃない」
とOKの手を逆にした。
「でも幽霊ってどうするの?」
すると女の子は凄い顔をした。
「今から取り憑くわよ」
そして彼女の体は透け始めた。
SF
公開:20/10/08 01:32

晴れ時々雨

普段Twitterにて140字小説を中心に書いています。ジャンルはないです。

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