静かな別れ

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家の庭にそびえ立つ大きい木。
かなり昔に植えられたらしい。
離れたところからもよく見える。
だから、おまえんちどこ? って聞かれたときには便利。
「交番前の道沿いにでっかい木がある家」
これで通じる。

そんな便利な木が伐採されることに。
薄々感じてはいたが、やっぱり大きすぎた。
台風とかで道路に倒れたら大変だし。

小さい頃は木登りしたり、木の皮をベリベリめくってたり。
良くも悪くもいろいろ思い出はある。

いままでお疲れ様。ありがとね。

なーんて言葉は気恥ずかしくて声には出せない。
相手はなんも返してくれないし。
でも心の中では少しさみしい。

すると、

ハラハラと一枚の葉が目の前に。
どこからか飛んできたのか?
いや、でも、あたりは住宅街で木なんてないし。

「......そっか」
大人になった私でも静かに返してくれたみたい。

「ばいばい」
そういって私も手を振り返した。
その他
公開:20/10/08 00:56

やよい

最近短編を書き始めました。
一応他のサイトでもちょこちょこ載せています。
よろしくおねがいします。

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