縁(ゆかり)暖房

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祖母の家はいつも床が暖かかった。
ずいぶんと古い木造住宅、床暖房なんて付いてないのに。

「あぁ、うちには縁(ゆかり)暖房がついているからねぇ」

私の疑問に祖母は笑ってそう答えた。
その家に住む人が、人生で得た縁の分だけ床を暖かくする。それが縁暖房らしい。
初めは祖母の冗談だと思ったけど、現に床は暖かいし他に暖房をつけている様子もない。私はその話を受け入れる事にした。

雪の降る寒い夜だった。
焼香も終わり、客間ではささやかな宴会が始まろうとしている。
私はセーラー服のまま、居間でうつ伏せになっていた。
祭壇で微笑する額縁の中の祖母と、記憶の中で快活に笑う祖母の顔が、頭の中に交互に浮かぶ。鼻の奥がツンとする。涙が溢れそうになる。

暖かい。
床に突っ伏した頬に、じんわりと熱が伝わる。縁暖房だ。祖母がその人生で得た暖かい心の温度。
遠い客間の喧騒を聞きながら、私はその温度を抱きしめていた。
ファンタジー
公開:20/10/08 20:29
更新:20/10/08 20:30

エビハラ( 宮崎県 )

平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…

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