毒を以て毒を治める

私の夫は口が悪い。誰彼構わず悪態を吐くし、乱暴な物言いで皆に嫌われている。
夫との離婚は何度も考えた。しかしその度に「離婚なんて絶対にしないからな！」と怒鳴られる。
その声に委縮して…私は今も夫婦関係を続けている。
夫に殺意を抱いた事は何度もある。その食事に毒を混ぜた事は１度や２度ではない。
夫が毒の入った食事を摂る。「不味い不味い」と言いながらすべての料理を平らげる。それどころかバリバリと皿まで噛み砕き始めた。
これには私も驚いた。そんな事をしては死んでしまう！
「毒食らわば皿までだ。俺をこの程度の毒で殺せると思うなよ」
毒舌家の夫はニヤリと笑った。
その態度に思わず笑ってしまった。そう、夫といると退屈しない。そして道を踏み外すすこともない。
私はかつて子供達に理想を押し付ける毒親だった。
そんな毒を夫が毒を持って制してくれた。夫は私にとって必要な毒。
毒も使い用によっては薬となる。