侍よ、負の縁を斬れ！

　薙刀を構えた女が叫ぶ。「父の仇っ、覚悟っ！」
　侍は静かに口を開いた。
「…あの男は村々から女を攫い、お上に貢ぎ腹を肥やす外道――聞く耳持たず、か…是非も無い」
　侍は刀を抜き、間合いを詰め、女の肩を袈裟に斬る。「許せ…」

　刀を構えた旗本が叫ぶ。「妻の仇っ、御命頂戴っ！」
　侍は奥歯を噛んだ。
「…これも因果か、縁か……名は？」
「下衆に名乗る名など持たぬっ！　死ねっ！」
　侍は刀を抜き、突進する旗本の心臓を突く。「許せ…」

　居合を見せた浪人が叫ぶ。「お尋ね者め、往生せいっ！」
　侍は涙を流して呟いた。
「…負の、縁、か」
　懐に隠していた石礫を浪人の目に撒き、怯んだ瞬間――彼奴の首を斬る。「許してくれ…」

　火縄銃を構えた童が、無言で、背後から侍を撃つ。
　吐血する侍は微かに笑む。「…未だ見ぬ英傑に、泰平の世を…願い、申し上げ…候…」
　侍は、ようやく――負の縁を斬った……。