孤立無縁

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駅前で路上ミュージシャンが知らない洋楽を歌う。黒人男性が英語で何か言っている。ピンクや青、かき氷じみた髪色の女子高生たち。彼女たちの声は日本語に聞こえない。ここがどこか異国の様に錯覚する。

渋谷の街は苦手だ。スマホの地図は複雑で目が回る。ここでは誰もぼくを知らない。孤立無援であり、無縁だ。

財布がない。絶望の間もなく更にスマホの電池が切れた。その暗い画面はその後の人生を暗示する様でもある。孤立無円なんて笑えない。

「財布落とさなかった?」
不意に声をかけてきたのは、駅で見かけた青髪の女子高生だった。 

財布を落とした時、黒人のボブが『落としたぞ!』と英語で叫んだが、ぼくは気づかない。事情を察した女子高生たちと交番に届けてくれたそうだ。

『良かったな』
ぼくと縁もゆかりもないボブの言葉は英語だが、今度はわかった。

駅前からは路上ミュージシャンが歌う、よく知るJPOPが聴こえた。
青春
公開:20/10/07 01:33
更新:20/10/07 23:29

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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