思い出の品作ります

無くした思い出の品を作る店に老夫婦がやってきた。注文は昔妻が質に入れたペンダント。結婚前の夫からのもので、18金のチェーンに真珠のトップがついていた。
二人は水晶玉に触ってイメージを見た。更にＡＩで合成画像を作り、譲れない点を確認する。
夫は二人のイニシャルを極々小さく入れていた。妻は気づかなかった。
『それで質屋で安かったのね』
夫は渋い顔をしたが、製作を了承した。

２週間後、老夫婦は再び店を訪れた。妻は満足顔だが夫は不満だった。
「どこを直せば宜しいでしょう？」
「全部だ！作り直せ！」
『それはだめよ！』
夫は妻が質に入れたことが気にくわないのだ。どうやっても満足するはずがない。
『わかったわ。お金は私が払います』
「なんだと！」
お金を払いペンダントを手に入れると妻は言った。
『あなたとは離婚します』
「な、なにを？」
妻はさっさと質屋に入ると買ったばかりのペンダントを売り払った。