冬を待つ

1
4

「なんだか夜が寒くなってきたね」
 長い面談を終えた帰り道、前を歩く娘が言った。
「うん。もう秋だからな」
 娘は時々バランスを崩しそうになりながら、狭い白線の上を器用に歩いている。私は色々聞きたいことがあったが、いつも通りに振る舞おうとする娘に、かける言葉が見つからなかった。
 夕方ごろ高校から電話がかかって来た時、私はまだ勤務中だったが早退して高校に駆けつけた。
 娘は屋上から飛び降りようとしていたらしい。面談中、娘はいじめに遭っていた事実をまるでなにも気にしていないかのような口ぶりで淡々と語っていた。

「早く冬にならないかな」
 娘は少しバランスを崩しそうになり、両手を左右に伸ばした。
「冬はみんなが寂しそうだから好き。私だけじゃないんだなって」
 娘はよろけて宙をさまよっていた足を地面につくと、うつむいたまま言った。

「あ。はみ出しちゃったよ」
その他
公開:20/10/05 19:52
更新:20/10/15 13:50
純文学

花脊タロ( 京都 )

純文学系の作品を読むのが好きなので書く方も純文学よりのものが多くなります。

ご感想頂けると大変嬉しいです。

Twitterも是非フォローしてください。
ホームページには自身の全作品をまとめて掲載しています。
Twitter→http://twitter.com/hnctaro
ホームページ→http://hnctaro.wordpress.com

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容