懐かし屋
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いつもの帰り道、見慣れないお店を見つけた私は、青いペンキの剥げかかったドアをゆっくりと開いた。
「いらっしゃい。」
少し長めの白髪を一つに纏めた、スーツの似合う初老の店主が、落ち着いた声で私に話しかける。
「ここは懐かし屋です。思い出を売っております。どうぞ、覗いてみてください。」
そう言うと、店主は店内にたくさん並んでいる色とりどりの望遠鏡の中から一つを取り出し、私の前に静かに置いた。店主に促されるまま恐る恐る望遠鏡を覗いた私の目に映ったのは、ジャングルの中を流れる雄大な河だった。こんな縁もゆかりもないところに私の思い出なんてあるはずがない。そう思いながら望遠鏡を少し上に傾けて、私はハッと息を飲んだ。この月の模様には見覚えがある。そうか、あの時の月、地球の反対側から見たらこんな景色の中にあったんだなぁ。私は感慨に耽りながら、結婚してから初めて妻と並んで見た、十五夜の月を思い返した。
「いらっしゃい。」
少し長めの白髪を一つに纏めた、スーツの似合う初老の店主が、落ち着いた声で私に話しかける。
「ここは懐かし屋です。思い出を売っております。どうぞ、覗いてみてください。」
そう言うと、店主は店内にたくさん並んでいる色とりどりの望遠鏡の中から一つを取り出し、私の前に静かに置いた。店主に促されるまま恐る恐る望遠鏡を覗いた私の目に映ったのは、ジャングルの中を流れる雄大な河だった。こんな縁もゆかりもないところに私の思い出なんてあるはずがない。そう思いながら望遠鏡を少し上に傾けて、私はハッと息を飲んだ。この月の模様には見覚えがある。そうか、あの時の月、地球の反対側から見たらこんな景色の中にあったんだなぁ。私は感慨に耽りながら、結婚してから初めて妻と並んで見た、十五夜の月を思い返した。
ファンタジー
公開:20/10/05 19:26
縁
ゆかり
月
ショートショートに興味を持ち、自分でも書いてみることにしました。初心者ですが、よろしくお願いします。コメントとても嬉しいです。ありがとうございます。
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