密室の恋
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アパート前の公衆電話に毎夜、女がやってくる。外島は発泡酒を飲みながら二階の窓から眺めていた。男が電話ボックスに近づくと同時に口論のような声を聞き、外島は家を飛び出した。丁度電話ボックスから初老の女性が出てくる所だった。
「あの、大丈夫ですか? 声が聞こえて」
女性は申し訳なさそうに頭を下げ、少し離れたベンチで煙草を吸う男を見た。
「夫なんです」
自宅療養している友人の安否確認をしていたと言う。
「今度からは家からかけなさいって。でも、娘夫婦がいて、からかわれるから」
幼なじみでずっと昔恋人だった相手だと語った。
「近所なんだけど、 こんなおばあちゃんでも心配なのね」
微笑んだ表情に若い時の姿が見えた気がした。
「素敵ですね」
「有り難う。ご免なさいね、騒がしくして」
並んで帰る二人の後ろ姿を羨ましく思った。でもきっとこっそり電話をかけにくるのだろう。少女のような微笑みで。
「あの、大丈夫ですか? 声が聞こえて」
女性は申し訳なさそうに頭を下げ、少し離れたベンチで煙草を吸う男を見た。
「夫なんです」
自宅療養している友人の安否確認をしていたと言う。
「今度からは家からかけなさいって。でも、娘夫婦がいて、からかわれるから」
幼なじみでずっと昔恋人だった相手だと語った。
「近所なんだけど、 こんなおばあちゃんでも心配なのね」
微笑んだ表情に若い時の姿が見えた気がした。
「素敵ですね」
「有り難う。ご免なさいね、騒がしくして」
並んで帰る二人の後ろ姿を羨ましく思った。でもきっとこっそり電話をかけにくるのだろう。少女のような微笑みで。
ミステリー・推理
公開:20/10/05 15:53
更新:20/10/05 15:55
更新:20/10/05 15:55
縁
謎解きと言うほどでは汗
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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