絶縁コアラ

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好物の匂いを嗅ぎつけ獣が現れた。愛くるしいその灰色の姿とは裏腹に、牙と爪は鋭い。

絶縁コアラ。その獣の名だ。

胸からニョキニョキと大木が現れ、みるみる葉をつけた。獣は鋭い爪を器用に使って大木を登り、好物の「ユカリの葉」を食べている。私と彼の全てを宿した葉だ。
はじめソレは「赤い糸」の形をしていた。小さな共通点も運命だと信じた。ソレが錆びついた「赤錆の鎖」だと気づいた時、私はその鎖に雁字搦めにされていた。

ソレは、今、大木となり、その木の上で獣は「ユカリの葉」を貪る。

消えていく。全て。

幼稚なワガママに困った様な笑顔も、夜景に照らされた運転席の横顔も。優しい指にくっきり残ったあの指輪の跡も。全部全部消えていく。消えていく。
目を覚ますと泣いていることに気づく。
夢を見ていた気がするけれど思い出せなかった。
レースカーテンから漏れた朝日が窓際のユーカリの葉を通して木漏れ日を作る。
ファンタジー
公開:20/10/06 16:43
更新:20/10/06 17:28

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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