密室の恋、阻む

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アパート前の公衆電話に毎夜、女が来る。外島は発泡酒を開け、二階の窓から眺めていた。人の影が電話ボックスに近付き、女性が小さく悲鳴を上げたのを聞き、外島は思わず家を飛び出した。
「あの、大丈夫ですか? 声が聞こえて」
初老の女性は申し訳なさそうに頭を下げ、少し離れた所で佇む男を見た。
「驚かせてすみません、夫なんです」
自宅療養している友人の安否確認をしていたと言う。幼なじみでずっと昔恋人だった相手だった。
「同居している娘夫婦に家でかけろって言われたんだけど、夫がうろうろしてうるさくて」
微笑んだ表情に若い時の姿が見えた気がした。夫を見ると街灯の光にぼんやりと表情が浮かび上がる。
「ご免なさいね、焼きもちやきなの」
困った顔で夫の方へ歩いていく。その後をすっと影が付いて行った。死してなお、妻に付いて回るのは夫か死神か。身震いする身体をさすった。
ホラー
公開:20/10/06 12:40
どちらがお好みですか?笑

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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