くっつきレモン

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道路わきの茂みから白い息を吐きながら子供達が飛び出してきた。服に沢山の小さな黄色い水玉をつけて。その水玉をもぎ取って女子に投げつける男子。キャーやめて~!水玉の正体はくっつきレモン。オナモミのように柔らかなトゲトゲで覆われた、うずらの卵ほどの小さなレモン。あぁ、今年もこの季節がやって来た。

カフェにて。「3番の席にくっつきレモン!」店員がレモンを宙に投げると、梁から鳥が舞い降りてお腹でレモンを上手にキャッチ。そのまま高度をさげ綾乃の方にスーッと降りてきた。トントントン!椅子の背もたれをつつく鳥のお腹から綾乃はゆっくりレモンをはがし爪で十字に切り込みを入れ、それを片手でギュっと絞って紅茶に入れる。温かい店内、温かい紅茶にフレッシュな香り。

家に帰ってコートを脱ぐと背中にレモンの絞りかすがついていた。ん?いがぐりから顔をだす栗のように、黄色いレモンの割れ目につやつやのどんぐり挟まっていた。
その他
公開:20/10/06 07:17

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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