引き落とし

駅のトイレで妙なキャッシュカードを拾った次郎君。試しに使ってみた。
適当に暗証番号を入れると、なんと作動！そこで1万円引出しと打込むと、取出口が開いた。
その途端、彼は胸が苦しくなり、倒れてしまった。

周りの人の通報で病院に運ばれ、医師は「強い心因性の衝撃による、一時的なショック症状」と診断。命に別状はなかった。

数日後、次郎君は知合いのセラピストに相談した。
ファンタジー・セラピストのドクター半多地は言った。「多分、貴方の拾ったのは『悪意のカード』かも知れません」
「は？」
「世の中の色んな人が溜めている悪意。普段はそれらは、別の空間に蓄積しています。貴方はそのカードを拾って、その溜まった悪意を引き落としてしまったのです」

ドクターは続けた。「そのカードは？」
「もう手元にはありません」
答えた次郎君にドクターは言う。
「それでいいのです。出来心だったので、軽い症状で済みましたね」