足指の男

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 女性の足指を舐ることに悦びを感じる者です。マゾヒズムではありません。踏まれたりするのは嫌いで、口中に含んだ際の不器用な慄きを愛しむ想いは、どちらかといえばサディズムに近いのではないでしょうか。
 匂いや味は邪魔になるので舐る前には洗っていただきます。足指のどこか投げやりなフォルムを舌でなぞったり、吸ったりする行為にのみ興奮するのです。
 女性の足の親指側から土踏まずをぎゅっと掴み、わたしの反対の手で女性の踵を支えて舐ったり、背後に座らせた女性の膝裏をわたしの肘で支え、女性の足をぎゅっと両手で掴んで舐ったり、女性をテーブルに座らせて中空の足指を無心に舐ったり。親指だけ、小指だけ。二三本まとめて、指の股を丹念に。いつしかわたしはわたしの全身が舌になって巨大なる女性の足指の間を這い回る蛞蝓になったようにも感じるのです。
 因みに、舐るのはお一人様二回までと決めています。ご連絡お待ちしています。
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公開:20/10/04 11:48
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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