真夜中のチャイム

最近真夜中によくチャイムの音が聞こえてくる。
だが変だな、あの学校はとっくに廃校になったはずだ。
気になって夜中、校舎へ行ってみるとやはり、キーンコーンカーンコーン、というチャイムの音だ。
きっと誰かがいたずらでもしているのだろう。と思っていたらどこからともなく子供たちの屈託のない笑い声が響いてきた。もちろん校庭には子供どころか幽霊だっていやしない。
こちらがぼんやりしていると、今度は校長先生の抑揚のない話し声が耳元で旋回した。と、お次は一転、溌溂な運動会のアナウンスだ。それからこれは部活動の掛け声、体育館のキュッキュッという靴鳴り、吹奏楽の音色に、文化祭のお芝居、ああこれは英語のスピーチだ。卒業式の歌まで聞こえてくる。

私は灰色の校舎を見上げた。
まるでこの無感情な巨体が走馬灯でも見ているみたいだ。
そういえば、「あの廃校、そろそろ取り壊されるのよ」
誰かがそうおしゃべりしていたなあ。