こびと派遣業 ミジェット：作曲家の巻

深夜、白井雪は男達と打合せていた。作曲家を含む４人だ。仕事は新作のピアノ協奏曲の総譜からパート譜を作ること。写譜屋の仕事だが演奏会は明日だ。
『今夜中にできます』雪が言うと皆快哉を上げた。
雪は、絶対に作業するこびと達の姿を見ないよう強調した。
翌朝仕上がったパート譜はリハーサルに間に合った。夜のコンサートは大成功だった。

作曲家は次に交響曲の作曲を頼んだ。雪は断ったが押切られた。
長期間かかるので心配になった作曲家はこっそりと覗いた。小人達は懸命に作曲をしていた。
仕上がった曲は、作曲家の目で見ても素晴らしい出来だった。
公演当日、リハーサルは上出来だった。しかし本番でオーケストラがミスを連発した。失敗したのだ。
作曲家は雪に怒鳴り込んだ。
「どういうことだ！？」
『あなたが覗いたことで音符達が揺らいだのです。覗かれると音符を長期間固定できませんから』
作曲家はがっくりと肩を落とした。