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「由香里?」
友人の結婚式の二次会へ向かう最中、廊下の途中で何人かがこちらを振り向く。
「どうしたの?」
皆がやけに心配そうにしているので、私はやっと自分が泣いているのだということに気がついた。
「は? え、なに?」
何が何やらわからない。
ふと、すれ違った男を見た。僅かに袖を触れ合った気がしたからだ。後ろ姿を見やると何故か胸が締め付けられるのを感じた。
これまで、どんな男にも興味を持ったことがなかった。昔から、誰にも私の心を奪うことなどできないと感じていた。ほとんど強迫観念のようにそれは作用した。父に対するコンプレックスも、男に不信感を抱くような経験もないが、まるで生まれる前から、想いが刷り込まれていたみたいに。
「すみません、あの」
自分の行為に驚くより早く、男に話しかけていた。
振り向いた彼は私を見ると目を丸くした。
「どこかで?」
ぎこちなく微笑み合う。
そう、多分どこかで。
友人の結婚式の二次会へ向かう最中、廊下の途中で何人かがこちらを振り向く。
「どうしたの?」
皆がやけに心配そうにしているので、私はやっと自分が泣いているのだということに気がついた。
「は? え、なに?」
何が何やらわからない。
ふと、すれ違った男を見た。僅かに袖を触れ合った気がしたからだ。後ろ姿を見やると何故か胸が締め付けられるのを感じた。
これまで、どんな男にも興味を持ったことがなかった。昔から、誰にも私の心を奪うことなどできないと感じていた。ほとんど強迫観念のようにそれは作用した。父に対するコンプレックスも、男に不信感を抱くような経験もないが、まるで生まれる前から、想いが刷り込まれていたみたいに。
「すみません、あの」
自分の行為に驚くより早く、男に話しかけていた。
振り向いた彼は私を見ると目を丸くした。
「どこかで?」
ぎこちなく微笑み合う。
そう、多分どこかで。
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公開:20/10/08 07:00
更新:20/10/06 09:00
更新:20/10/06 09:00
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