手のひらを耐用に

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手のひらを電灯に透かしてみても、そこには私の黒々とした手のひらが、焦げたクッキーを型から外す前のような、縁を0.1mmほどの白い虫が這いずっていたりして、どうにもこうにもできないうちに皮膚の隙間から入り込んでしまうような、そんな煩わしさを認める前に私の右手の中指とお姉さん指の間の水かきの中へ虫がフラフラと進み出てしまったので、私は思わず水かきを歯で傷つけてしまったのだ、まあバカなことをしてばかりだね、そうして母はまた私の背中にコツコツと煙草の先を当ててくるので、ごめんなさいと言ったつもりだったのだが、どうやら気持ちがこもっていなかったようで、ごめんなさいという音を出しただけのようで、そう聞こえるような感じに空気を振動させただけのようで、母は怒っているのだが私は久しぶりに血を流さなかったのだろうどこにも痛みはなく、水かきからも血は出ておらず、かわりに手のひらがびっしょりと濡れていたのだった。
その他
公開:20/10/04 22:40

まる

よろしくお願いします。

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