腐れ縁、もしくは運命の悪戯

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 ある朝、窓の外を見ると小さな瑠璃色の鳥がいた。
「怖がらないで、僕、怪しい者じゃないから」
 鳥は人懐こくて、私達は色んなことを話した。春風が桜の花弁を揺らす。鳥は枝豆と桃と飛行機が好きだと言った。私は2年前に振られてしまった恋人のことを話した。
「彼ね、スピリチュアルなことは信じないって言い張ってた。人間は死んだら炭素になるだけ、前世の記憶は脳の誤作動だって」
 不器用な人だった。でもとても優しい人だった。
「あなたなのね?」
「生まれ変わりなんて、信じてなかったのにな」
 鳥になった彼は今生の死期を悟りお別れに来たのだという。
 私も死んだら転生して彼に会いにいこう。腐れ縁でも運命の悪戯でも構わない。何度も何度でも、会いに行こう。
 ばいばい、またね。私達はキスをした。

 汗が滴る、蝉が鳴く墓参りの帰り道。
「僕、いつ人間になれるのかな」
 茶トラの子猫が私を見上げて溜息をついた。
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公開:20/10/04 22:09
更新:20/10/05 20:56
コンテスト

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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