ありきたり

風が吹いた。ありきたりな今日をありきたりなこの話を。幸せって教えてくれるこの世界の始まるように吹いた。結局みんなハッピーエンドが好きなんだ。いつもの日々で変わらない毎日が終わらないように、今日もまた黄昏ながら歩く。
「やあ、今日もまた会ったね。」
いつもいるおばあちゃん。優しそうなおばあちゃんがすれ違いざまにそう言う。
「はい。ここが好きなんです。幸せを感じられるので。」
笑顔でそう答えた。
「そうかい。そうかい。そりゃよかったなあ。幸せが1番だからなあ。」
そう言われた。ああ。今日も一段と幸せだ。
こんな毎日が続けばいいのに。
いや、続かせるんだ。自分で。
そんな毎日が半年、1年続いた。その期間毎日、毎日歩いて幸せを感じ続けた。
それから半年後気づいたら私は死に際だった。走馬灯がこれか。笑えてくるな。おばあちゃんに見守られてる。これもまたありきたり。ありきたりで幸せな物語。