掴み取り
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「おばあさん、やらないの?」
あの世のお祭りで名物の「寿命掴み取り」コーナーには長蛇の列が出来ていた。
「来世の事は、来世でね。生まれ変わった世界が素晴らしいかどうかも分からないでしょ」
掴みすぎて箱から手を引き抜く事が出来ずに悔しそうに騒いでいる男が目に入った。
「ふふ、あんなに欲張ったって、減刑には焼け石に水だわ」
地獄の亡者には減刑を、天国の亡者には来世の寿命を上乗せ出来る。
「坊や達は、並ばないの」
「坊やって歳じゃないけどね」
「並んで来なさいな。見たところ天国の子でしょ? 来世は親より長く生きなさい」
「親孝行出来ずに死んだのに、天国で良いのかなって」
「あなた達はそういう時代だから」
素直に頷くと並ばずにうろうろしていた若武者達に声をかけて列に歩いていった。
「軍記物、好きなのよね。眼福、眼福」
「おばあさん、早く生まれ変わりなよ」
鬼が背後で溜め息をついた。
あの世のお祭りで名物の「寿命掴み取り」コーナーには長蛇の列が出来ていた。
「来世の事は、来世でね。生まれ変わった世界が素晴らしいかどうかも分からないでしょ」
掴みすぎて箱から手を引き抜く事が出来ずに悔しそうに騒いでいる男が目に入った。
「ふふ、あんなに欲張ったって、減刑には焼け石に水だわ」
地獄の亡者には減刑を、天国の亡者には来世の寿命を上乗せ出来る。
「坊や達は、並ばないの」
「坊やって歳じゃないけどね」
「並んで来なさいな。見たところ天国の子でしょ? 来世は親より長く生きなさい」
「親孝行出来ずに死んだのに、天国で良いのかなって」
「あなた達はそういう時代だから」
素直に頷くと並ばずにうろうろしていた若武者達に声をかけて列に歩いていった。
「軍記物、好きなのよね。眼福、眼福」
「おばあさん、早く生まれ変わりなよ」
鬼が背後で溜め息をついた。
ファンタジー
公開:20/10/04 18:58
軍記もの
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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