黄昏列車

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夕暮れ時、通勤帰りの列車に乗りこんだ。
席に座らず、そのまま立って向かった車窓からは、日没直後の雲のない西の空に、夕焼けの名残りの赤さが目立つ。
列車が出発し、何気なく車窓を眺めていると、代わり映えしない風景が流れていく。
すると急に、車窓から赤さが失われて藍色の空が広がり、昔あった遊園地が見えてきた。現在は閉園し、跡地は住宅街になったはずだが、その景色とは違う。
思わず目を擦り、黄昏時の車窓を凝視するが、やはりあの当時の光景が映る。
そして、列車が駅のホームに停まる。
『遊園地前』ーー今はなき駅名だった。
列車の扉が開き、懐かしい雰囲気とともに、お祖父さんに手を繋がれた孫のような男の子が、楽しそうに笑顔で乗車してきた。
どこかで見かけたことのある男の子だ。
誰そ彼、出会ったことがある? いや幼い頃の私だ。
次の瞬間、ホームは今の駅名に戻り、車窓からは、いつもの住宅街が見えるだけだった。
青春
公開:20/10/03 07:03
更新:20/10/03 08:13
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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