絶縁ベルト

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「うむ、ついに完成したぞ」
R博士の声を聞きつけて、隣人の男がやってきた。
「お次は何です?そろそろ実用的な…」
机の上には革製のベルトが横たわっている。
「忠告を聞かないのは誰…まあ聞たまえ。これは苦手な人との縁を調節できるベルトなのだ。妻は私の研究に文句ばかり言ってくるのだが、巣ごもりによって更に増した。しかし、このボタンを押したので妻は自分から別居したいと申し出た。これで研究に精が出る、という訳だ」
以下略。

男は翌日、腰に絶縁ベルトを巻いて出社した。
いつも通り部長が嫌味を言ってくる。
(こんな惨めな思いも今日までだ、えい)
心の中で呟くと、ベルトの脇にあるボタンを押した。

翌週、部長は別の営業所に左遷された。
男が一人ガッツポーズしていると、同僚が声をかけてきた。
「エラく機嫌良いようだが、残念な知らせだ。お前の昇格の話。アレ無くなったそうだぜ。出世には縁がなかったんだな」
公開:20/10/17 18:00
ゆかり

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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