創作落語『世話湯宿』

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田舎者が都会で道に迷ったってぇ、駅員さんも知らんぷり。
悪事にだまされちゃぁ「自己責任」ですって。
冷えんのは季節だけにしてもらいたい。
一方、江戸の冬は温かかったんでしょうな。
なんせ人情の時代でしたから。

旅人が見知らぬ土地で迷ったが、目的の繁華街はまだ山の向こう。
夜も更けてきて困っていると、灯りのついた家から番頭が出てきた。
「旅の人ですかな」
「礼ができる金もなけりゃ汚ねぇ身分だ、構わないでくだせぇ」
「いんや、情けは人の為ならず。おあがんなさい。」
旅人、ぺこりとお辞儀をしてついていくと番頭の湯宿に案内された。
風呂にもはいってさっぱりするてぇと、荷物の上に二両も置いてある。
「生い先短い人生だ、どうぞ使ってください」
「縁もゆかりもねぇのに、面目ねぇ」

「おや、足りなかったかい?円も湯も、貸しただろう」
公開:20/10/16 18:00
更新:20/10/03 02:15
創作落語 湯宿 ゆかり 江戸では円とは言わないけれど 御愛嬌で

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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