女医の翼

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「怖い?」
「離れ離れになるのは、ちょっと怖いわね」
肩に回された彼の腕に触れる。今もとても愛おしい。彼のいない世界に戻るだけなのに、私はずいぶん弱くなってしまった。
常に成績トップでエリートの道を歩み、研究医として生きる私のプライベートを支えてくれた彼。
「大丈夫だよ。僕はいつでもここにいるから」
「ありがとう」
私は彼にキスをした。
今度アメリカに発ったら、私はもう彼の元には戻らない。彼もそれをわかっている。彼なしでも生きてゆける、私は元来そんな女だ。
私は『死ぬときに苦しまない薬』を作った。27年後に地球に衝突するであろう巨大な水球『ポセイドン』による人々の恐怖を和らげる為に。
今度は『不死になる薬』を作る。アメリカのチームはその薬の研究を全面的にバックアップしてくれる。人類の為に私は強くならなくてはいけない。
私が大空を飛べるように自由にしてくれた彼と、授かった新しい命の為にも。
その他
公開:20/10/02 20:36

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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