洋菓子店S’APPUYER(サピュイエ)

洋菓子店S’APPUYER(サピュイエ)の煙突からは、香ばしいバターの匂いがする。
若い夫婦は週に一度エクレアを買っていく。旦那は昔ヤンチャだったらしい。次の女性は「バイクで事故った旦那のお見舞いに。」と照れ臭そうにマドレーヌを買った。厳格そうな老人は初孫の祝いにマカロンを購入。泥棒のような怪しい男は、700円のクレム・ブリュレを4つ。ラング・ド・シャを買う女性の表情は明るい。女優の事件の影響かフロランタンの売り上げは下がっている。看板商品の無重力スフレは好調で、今日も女性が「友達に」と微笑みながら買って行った。
洋菓子店に世界を変える力なんてない。それでも、辛い時、悩んだ時、疲れた時、洋菓子がそれを和らげてくれるだろう。心に寄り添う洋菓子を目指し、店主は名をつけた。
S’APPUYER（サピュイエ）フランス語で「寄り添う」を意味する、洋菓子店の焼き菓子は、今日も人々の心にそっと寄り添う。