海の魔力

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ざざあ。
ざざあ。
一組の男女が寄せては消える波をじっと見つめている。
「あ、あのさ」
彼は震えた声で言った。
「なに?」
「えっと……。やっぱりなんでもない」
彼はプロポーズをするつもりでここにきた。
しかし極端に臆病であるため、なかなか勇気が出ないでいた。
「あの……」
再びチャレンジしようとするがうまくいかない。
と、そのとき、海から声のようなものが聞こえた。
ざざあ。
ざざあ。
彼は波の音が自らに語りかけているような感覚を覚えた。
それは「頑張れ」「お前ならできる」と背中を押してくれているような気がした。
「あの、結婚してください!」
彼はついに言うことができた。
しかし彼女はぽつりと言う。
「ごめんなさい。別れましょう」
海は広くて大きくて、そしてすべての物事に対して平等だ。
ざざあ。
ざざあ。
彼女はどこか晴れやかな顔をしていた。
公開:20/10/01 23:39
スクー 声援する海

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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