ミギノホネッコ

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昔おばあちゃんが言ってた。
悲しみが凝り固まって小さな結晶になり、骨の中でカタカタなるようになったら、満月の夜にあの三叉路へ行ってごらん、ミギノホネッコが食べてくれるから。

夜中にこっそり家を抜け出した。
銀色の底に沈む道を歩く。聞こえるのは足音と、悲しみの鳴らすカタカタという音だけ。

三叉路の片隅には小さな釣鐘形の石。それを囲むように四方に丸い石が置かれている。
本当に現れるのかしら。思うまもなく白い影が立ち上り、すうっと右手を伸ばしてわたしの右手を握った。
次々と結晶が吸い込まれていく。このまま全て吸われたら楽になる。でも悲しみのない人間って?
急に怖くなって右手を振り解くと、ひと粒手からこぼれ落ちた。
ミギノホネッコはふわんと揺れて、さよならみたいにゆらゆらと手を振った。
こぼれ落ちた粒をつまみ口に含むと、ほろ苦く甘い。

帰り道、少しだけ残った悲しみが骨のなかでカタカタ鳴った。
ファンタジー
公開:20/10/01 23:01
秋っぽい話

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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