御縁玉

　その神社を通りかかったとき、五円玉が足下に転がってきた。拾って見ると、刻印が『御縁』になっていた。
　ジョークグッズでも賽銭箱に入れられ、神様が怒って投げ返したのかもしれない。俺は本物の五円玉を賽銭箱に入れて帰った。
　帰宅して、御縁玉をじっと眺めてみた。刹那、御縁玉の穴の向こうから光が差した。目を近づけると、どこかの海岸が広がっていた。これはきっと何かの《御縁》があるに違いない。が、どこの海岸だろう……

　三か月後、もう諦めかけたとき、その海岸を俺は歩いていた。
　砂浜の向こうから、髪の長い女性が歩いてきた。
　目の前に来たとき、お互いが右手を差し出して掌を開くと、御縁玉があった。それ以来、彼女と付き合うことになった。

　俺は通勤電車に乗って、昨日見た夢を思い出していた。
　電車を降りて、改札を出ると、聞き覚えのある声が俺の名前を呼んで、振り返った。
「夢で、お会いしましたよね！」