無重力スフレ

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「付き合ってないの?!」
「ケンタとはそんなんじゃなくて…」
「付き合ってもない男と一緒に住んでるって…」
「間借りしているだけだから」

友人は「信じられない」を連呼し、突きつける様にいう。

「男女の友情なんてタイムマシンより実在しないの。」

同棲していた元彼に別れを告げられ、行く所のない私に、事情も聞かず間借りさせてくれたケンタは、学生からの男友達だ。

キッチンのケンタ、彼のパスタは毎日食べても飽きない。それが長居してしまっている理由でもある。

食後に食べた「無重力スフレ」は名前の通り、体が宙に浮いてしまうほどふわふわで、浮ついた気持ちになる美味しさだ。

「おいしいね。」

ケンタが微笑む。私もなんだか嬉しくなる。「おいしいね」とただ言い合える人がいる。

愛とか恋とか名前をつける前に、それがただ嬉しかった。

浮ついた無重力な関係。
それでも、今はそれが心地よかった。
SF
公開:20/10/02 19:14
更新:20/10/02 19:17
洋菓子短編⑦ SF(スフレ)笑

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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