月鳥

満月にヒビが入っていた。
最初は気のせいだと思ったが、見ていると上から下へ少しずつ伸びている。

まさかそのまま真っ二つに割れたりは…。

ビリビリビリ…パカッ！

割れた…。
満月の中から翼を広げた鳥が出てきた。
尖ったくちばしを大きく開け、

「ガャャャャャャャャ！」

月と地球の距離はかなりあるはずだが、はっきり聞こえた。
鳴き声を聞いた瞬間、釘を思いっきり耳の中に刺されたような強烈な痛みが走った。

鳥は羽ばたき、満月の殻から飛び出した。
大きい翼を上下に動かしながら、真っ直ぐこっちに向かってくる。

鳥は何度も、くちばしを大きく開けていた。
鳴いているのだろうか？
さっきは聞こえたのに、今は何も聞こえない。

何も、聞こえない…。

遠くにいた鳥の姿が、はっきり見えるようになった。
真っ白で美しい鳥だ。
くちばしを大きく開けた次の瞬間、目の前が暗闇に包まれた。